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ふと山道の右の尾根を見上げると

林の中に一匹の鹿が立っていて、私の方をじっと見つめているのでした。

・・・・・・

夏季休暇というほど長い時間ではありませんでしたが、

休みが取れたので実家に戻ることにしました。

その時一度行きたいと思っていた、岩に囲まれたお寺に

お参りする機会を持つことができました。

小学校の時に遠足で行った記憶がある、山の中のお寺です。

地図で位置を確かめると、山のふもとまでは自転車が便利なようでしたので

実家においてある自転車を借りていきました。

思っていた通り、タイヤから空気が抜けていてたので、空気入れを使う必要がありました。

それでも出発したのは、朝の8時前でした。

道路が途中から長い坂道になったので汗をかきながら、自転車を押していかなければなりませんでした。

見下ろすと市街地や学校、それに高台に造成された団地が見えました。

坂を上り続けるとやがて二つの小川が合流し、橋が架かっているところに差し掛かりました。

傍らにきれいに掃除されたお社があり、

さらに急な坂道が枝分かれていて

路傍にお寺の名前が書かれた案内板を見つけました。

そこで私はお寺の登り口に来たことを知りました。

私はお社の脇に押してきた自転車を置かせてもらうことしにして、

案内板に従ってさらに急な坂を登っていきました。

数件の民家と畑を通り過ぎました。

段にしたててある畑では主婦らしき人がツルものの夏野菜の世話をしていました。

登り続けたシャツの背中はすでに濡れていて顔を拭くタオルも湿っていました。

程なくして道は林の中に入りました。

ひんやりとした空気が心地よく顔を撫で、高い杉の木におおわれた坂道は濡れて光っていました。

地図を見ていた時はもっと荒れて崖のような道を想像していましたが、

こうして登ってみると、私は自分が念願していた通りの道を歩いていることがわかりました。

道はある沢に沿って谷筋をたどっていましたが、

目指すお寺はこの沢の上流にあるようで、私はゆっくりと坂道を登りました。

ふと斜面の上に目をやりました。

そこには一匹の鹿が細長い顔をこちらに向けて私の方をじっと見つめていました。

茶色い胴体に白い斑点の浮き上がっているのは鹿独特の模様なのでしょう。

一匹しか見えませんでしたがおそらく近くに群れがいるのだと思いました。

鹿がいるから何が変わるわけでもあるまいと、私は気を取り直して再び自分の道を歩きだそうとしました。

ところが2、3歩いてから、珍しいことだから写真を撮ったらどうだろうと思いつきました。

そこで歩みをとめ再び鹿の方に目をやると、彼は素早く警戒して一声、呼子のような高い鳴き声を林の中に響かせると

尾根の向こう側へと駆け去ってゆきました。

・・・・・

到着したそのお寺には驚くほど冷たい湧き水が流れており、私は何にも代えがたく掬って頂きました。

また鐘つき堂には参拝者は自由にこれを撞くべきことが記してありましたが

私にはこの静かな場所を鐘を鳴らして変える気が少しも起こりませんでした。

そして岩に刻まれた古い時代の数々の石仏、石塔や本堂にお参りしました。

・・・・・・・・

この滞在中に私は他にも代えがたい大事なものを見出したと思います。

この日以前に私は実家に戻ってきましたが、

長く電車に揺られて夜になって到着し

その日は疲れてしまい早めに布団にはいりました。

真っ暗でとても静かな夜が窓の外に広がっているのを感じながら

いつもと違う天井を眺めて、眠りにつきました。

そして翌朝は、空が明るんできた頃、名前の知らない一羽の鳥が

甲高くさえずる声に眠りを破られたのでした。

・・・・・・







2017/08/22(火) 23:36 日記 記事URL COM(0)
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